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抗うつ薬の鎮痛作用

慢性疼痛とうつ病の関係

身体に慢性的な痛みがあると気分がめいるものです。持続的かつ原因不明の痛みで悩んでいると、いらいらしたり、抑うつ的になったりします。 一方、うつ病になるとその身体的な症状として、頭痛、肩こり、腰痛などの慢性的な痛みが高頻度に出現します。このように、慢性疼痛とうつ病はある意味においてお互いに影響を及ぼし合います。 さらには、多くの抗うつ薬が抗うつ作用だけでなく、鎮痛作用もあわせ持っています。このような背景から、歯科心身症の舌の痛み、歯の痛み、あごの痛みなどで悩んでいる患者に対して、 原因は「心の問題」などとして扱われてしまうことが多いのです。

ところが近年になって、抗うつ薬による「抗うつ作用」と「鎮痛作用」は、その作用機序が異なっていることが明らかになってきました。

抗うつ薬による抗うつ効果の発現機序

うつ病の原因は十分に解明されていませんが、様々な臨床薬理試験から、うつ病では脳内のノルアドレナリン神経とセロトニン神経の機能が低下していると考えられています。この見解に一致して、ほとんどの抗うつ薬は、脳内のノルアドレナリン神経系あるいはセロトニン神経系の伝達能を増大させる働きをもっています。このことが、抗うつ効果と関連していると考えられています。

 ・神経細胞の伝達のしくみは「神経細胞とシナプス」を参照。
 ・ノルアドレナリン神経系のしくみは「ノルアドレナリン」を参照。
 ・セロトニン神経系のしくみは「セロトニン」を参照。
 ・抗うつ薬の特徴は「抗うつ薬の種類と特徴」を参照。


抗うつ薬が有効な疼痛性疾患

抗うつ薬がある種の疼痛に対してその痛みを緩和させる作用を有することが古くから知られています。痛みは様々な原因によって起こります。切り傷、打撲、捻挫、骨折などの物理的な要因による痛み、炎症・リウマチなどによる痛み、神経性の痛みなど、いろいろなタイプの痛みがあります。抗うつ薬はニューロパチー、帯状疱疹後神経痛などの神経性の痛み対して鎮痛効果を有しているという報告が数多くあります。さらには、歯科心身症のように原因を特定できない痛みに対しても優れた鎮痛作用を発揮します。実際の臨床で、このような疾患に対して抗うつ薬の鎮痛効果を実感されている医師は少なくありません。


抗うつ薬による鎮痛効果の発現機序

痛みを感じるのは脳です。知覚神経が支配する末梢組織に何らかの障害があると、それを知らせるために痛み刺激が脳へ伝達され「痛み」を感じるようになります。また、脳から下行性に痛みを抑制する神経路が存在します(下行性疼痛抑制系)。この痛みの抑制に関わる神経伝達物質はノルアドレナリンとセロトニンです。

下行性疼痛抑制系においてノルアドレナリンとセロトニンの細胞外濃度が高まると鎮痛効果が現れます。抗うつ薬は脳内のノルアドレナリンやセロトニンの再取り込みを阻害しシナプス間隙のこれら神経伝達物質の濃度を高めることで「抗うつ作用」を発揮しますが、下行性疼痛抑制系の細胞外ノルアドレナリンやセロトニン濃度も増やすため「鎮痛作用」をもたらすことができるのです。

抗うつ薬による下行性疼痛抑制系の増強により、歯科心身症に含まれる多くの疾患に存在すると思われる神経回路の混線や侵害受容器刺激と連動しない異常な疼痛インパルスが抑えられると考えられます。このことが、歯科心身症の痛みや異常感覚に対して抗うつ薬が有用である理由のひとつと考えています。実際に、求心性の三叉神経は脊髄内で下行性疼痛抑制系の入力を受けていることが知られています。

神経細胞

下行性疼痛抑制系

 NEW [抗うつ薬の鎮痛作用」 下行性疼痛抑制系と三叉神経 
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