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歯科心身医学の発展のために

「歯科心身症」あるいは「口腔心身症」と言う病気の認知度は、我が国はもちろん世界中のどの国においても必ずしも高いとはいえません。 しかし、「歯科心身症」は、何十年も前から歯科医学の教科書に記載されており、各種専門学会雑誌などでも報告されています。歯科心身症の症状に苦しんでいる患者さんが、世界中に少なからず存在することは疑いのない事実です。

しかしながら、当の歯科医師側も、現行の保険制度ではひたすら歯の処置を行わなければ不採算に陥ると言う事情もあり、はっきりと捉え難い症状を敬遠し、虫歯や歯周病などの「歯の専門家」に徹したいという考えが主流のようです。また、大学病院など大きな病院の歯科口腔外科では、口腔癌の他、重症の外傷・炎症などの患者さんの診断・治療に追われ、歯科心身症まではなかなか手が回らないのが現状のようです。

食べること、味わうこと、話すことに支障を来たすのみならず、何もしていなくても四六時中、口の中が痛んだり、不快な違和感が続いたりすることは、患者さんの生活の質の著しい低下に直結します。

「癌の苦しみに比べれば」、「脳卒中の後遺症はまさに地獄」、「心筋梗塞の恐怖に比べれば」など、ご自分の専門領域の患者さんと比べて歯科心身症など取るに足らないのではないかなどの意見もあるかと思います。しかし、歯科心身症患者のなかには、癌や心筋梗塞などの生命にかかわる疾患を併発されている方もおられますが、「これなら癌の方がまし」といった切実な訴えをよく耳にします。「生命にかかわらない」から「たいしたことはない」、とは限らないのです。

従来、他覚的所見や検査上の異常に欠く訴えは、「不定愁訴」「精神的なもの」と一蹴されがちでした。歯科心身症の患者さんは、しばしば精神科や心療内科に「回され」ます。しかし、精神科や心療内科の先生方が診られても、明らかな精神症状がなく心理社会的背景にも問題のない患者さんがほとんどです。精神疾患としての診断ができないうえに、ひたすら頑固な身体症状のみを訴え続ける患者さんに困惑されることがしばしばあるようです。

我が国においては、様々な制約にもかかわらず、欧米よりはかなり親身な医療的対応がなされているといえるでしょう。それでも、歯科で対応してもらえなかった患者さんは、他の診療科で、結果的に「口のことはわからない」と言われることが多いようです。患者さんは、あたかも医療の隙間からもれてしまい、難民化してしまうかのような状況です。このように「医療の死角に陥ってしまった患者さんこそ、歯科心身医学が真に対象とすべきではないか」と考えてきました。

「歯科心身医学」は何十年も前から歯科の中で「必要な分野」「重要な領域」と言われつづけながらも、依然として十分な認識や評価をされないまま、「やはり面倒くさい」と敬遠され、「所詮、生噛りの素人芸ではないか」「物好きがやるもの」と軽視されてきたのが現状ではないでしょうか。私の勤務していた大学病院では先代の都 温彦教授以来、40年近く「歯科心身医学」の臨床的研究が続けられてきました。歯科医師のできることには限界がありますが、歯科心身症の場合、口の中に精通した歯科医師でなければできない、きめの細かい対応や治療などの技術と知識をもっています。

このホームページを開設してから、医科、歯科問わず、旧勤務先では九州圏内はもとより東京や大阪といった遠方からも患者さんを、現勤務先では関東圏以外からもご紹介をいただけるようになりました。 紹介医の先生方のご協力を得ながら、1日でも早く患者さんが苦痛から解放されるよう、日々の診療の中から、治療技法の開発・改良の試行錯誤を繰り返し、歯科心身症の病態解明に邁進している毎日です。

しかし、まだまだゴールは遠く、発展途上の領域です。先生方からも、当ホームページへのご希望やご感想、改善点など、広く声をお寄せいただければ幸いです。


                      2008年 1月
                      踊る歯科心身症ネット管理人
                      豊福 明 (略歴

                      (2007年3月16日より、下記の所属となりました。)
                      東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
                      全人的医療開発学系専攻
                      頭頸部心身医学分野 教授


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