非定型歯痛の症状と特徴
はじめに
非定型歯痛は、日常診療において頻繁に遭遇する疾患であり、舌痛症とならんで代表的な歯科心身症疾患といえます。しかしながら、非定型歯痛に対する医療従事者への認知度は高いものではありません。実際に、既に多くの歯を無意味に抜歯された後に当病院へ受診されてくるケースが、決して希ではないのです。このような背景から、非定型歯痛の臨床的な特徴を医療関係者向けにまとめてみましたので、日々の診療の中でご参考になれば幸いです。
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抜歯を繰り返した非定型歯痛の症例 (女性、60代)
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エックス線写真での異常は認められないが、歯の痛みが治まらず歯科をドクターショッピングした非定型歯痛の症例
(男性、20代) |
非定型歯痛の痛みの性状
- 歯に限局する持続性、自発性の鈍い痛み(じんわり、じわじわ、ずーんと重苦しい)として表現されることが多い。灼熱痛、深部痛を呈することもある。
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痛い部位はしばしば移動性で、歯のない顎の部分や上下顎全体まで拡大することがある。
- 痛みは複数神経領域にまたがることが多く、両側性、片側性の両方があり、上顎に多い。
- 痛みは何カ月、何年もの長期間に渡り、ときに急激にひどくなることがある。
- 三叉神経痛のような電激痛ではない。
- 子供を除いて、どの年齢にも、男女ともに発症し得る。
- 20〜30代、中年女性に比較的多い。
- 痛みの強さは中等度〜耐え難い程度である。
- 食事、会話には大きな支障がないことが多い。
- 痛みには日内変動がある。
- 食事、趣味など何かに集中している時には痛みが少ないことが多い。
- 痛みは日常生活の家族問題等のストレス、疲労や不安、感情の動揺によって増強される。
非定型歯痛の診察所見
- 臨床的検査やエックス線撮影などの検査において、相応する異常を認めない。
- 圧痛の感受性が亢進している。触る、温度の刺激などに歯が敏感になっている。
- トリガーポイントはない。
- 圧痛・打診痛・冷温水痛などは認めることもある。
- 一歯または複数歯に限局して発現し、臨床的には根尖性歯周炎等の可能性を示唆するため、鑑別診断が難しい。
非定型歯痛は治療抵抗性のケースが多い
- 歯内治療の繰り返しによっても改善せず、もしくは処置のたびに増悪することが多く、根充ができないばかりか貼薬、仮封さえ困難な場合もある。
- 歯内治療、歯根端切除術施行後に抜歯された場合が多く、治療後も疼痛が継続し、他の歯に痛みが移動することが多い。
- 鎮痛薬(NSAIDs)、外科処置、歯科的処置では改善が得られない。
- 局所麻酔、神経ブロックに対する反応は不良である。
- 抗うつ薬やメジャートランキライザーが有効とされている。
非定型歯痛と類似疾患
- 過敏性大腸炎や緊張性頭痛など身体の他部位の疼痛を訴えることも多く、慢性疼痛の病歴は複雑なことが多い。
- 口腔感覚異常、顎関節症を伴うことが多い。
- 鎮痛薬(NSAIDs)、外科処置、歯科的処置では改善が得られない。
- 明らかな精神障害が基盤にあることはまれである。
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