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舌痛症に対するSNRIの効果
研究の背景と目的
舌痛症でみられる慢性的な舌の痛みに対して、鎮痛薬や抗生物質などでは効果が認められない。舌痛症・かみ合わせの異常感などの歯科心身症の症状に対して、
三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンが有用であることが古くから知られている。 私は舌痛症の発症機序として
脳内の神経回路の混線状態を想定しており、抗うつ薬が歯科心身症の
様々な症状に有効であることは理にかなっていると考えている。しかしながら、アミトリプチリンなどの
三環系抗うつ薬は副作用の面からその使用に制限がある。近年、選択的セロトニン・ノルアドレナリン
再取り込み阻害薬(SNRI)である ミルナシプランが日本で処方できるようになった。
この薬は、その作用機序から脳内の混線状態を整理する作用や、下行性疼痛抑制系を増強する作用が期待でき、舌痛症に対して効果的な可能性が考えられた。
そこで、舌痛症の患者に対して、ミルナシプランの有用性を検討した。
研究の方法
- 研究参加への同意を得られた11名の舌痛症患者(女性9名、男性2名)を対象とした。
- 研究参加の選択基準は、舌に灼熱感を伴う慢性的な痛みがあること、その他の限局性あるいは全身性の疾患がないこと、精神疾患の既往歴がないこと、疼痛を惹起する薬物の服用がないことなどである。
- ミルナシプランは、初期用量を15mgx2/日(朝食後と夕食後)とし、以後、症状に応じて増減した。投与期間は6週間でオープン試験として実施した。
- 痛みの評価にはビジュアル・アナログ・スケール(VAS)を用いた。加えて、うつ病との関連性を調べるためにZungの自己評価式うつ病評価尺度(SDS)を用いた。
研究の結果
- 患者の平均年齢は59.1歳で、痛みが発症してからの期間は平均で27.5ヶ月であった。
- 投薬開始時のVASは平均89.1mmで、SDSは46.9点であった。
- 試験終了時のミルナシプランの平均投与量は、58.6mg/日であった。
- 1名の患者は症状の消失を理由として試験途中に自己判断で投薬を中止したため、解析対象から除外した。
- 10名中5名に痛みの著明な改善(VASの50%以上の改善)、3名に中等度の改善が認められた。2名は症状の改善も悪化も認めなかった。(図を参照)
- 投与開始時のSDSの得点から抑うつ症状の存在を伺えたが、8名の患者でSDS得点の減少を認めた。しかしながら、VASで認められた疼痛緩和作用との相関性がなかった。(図を参照)
- 1名に動悸、1名に便秘の副作用を認めたが、いずれも軽度であり投薬の中止には至らなかった。

図 舌痛症患者におけるミルナシプランの効果
研究の考察とまとめ
- ミルナシプランの6週間の投薬で、10名中8名に痛みの軽減が認められ、3名では痛みがほぼ完全に消失した。また、有効例では効果の発現が早く、投与1週間以内に患者自身がその疼痛緩和作用を自覚していた。
- ミルナシプランの忍容性は良く、今回の研究において問題となる副作用を認めなかった。
- 痛みの改善作用と抑うつ状態の改善作用に相関性がなく、ミルナシプランは抗うつ効果とは異なる作用で痛みを改善している可能性が示唆された。
(Int J Psych Clin Pract 7, Suppl 1 ; 23, 2003)
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