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咬合異常感に対するSNRIの効果
研究の背景と目的
咬合異常感(Phantom bite syndrome)では、義歯や歯のかみ合わせの慢性的な違和感があり、そのことが気になって日常生活に支障が及ぶようになる。しかしながら、その原因を特定できるような歯並びの異常やあごのずれなどの異常を確認することができない。患者は、咬合の異常感を治してくれる歯医者を求めて医療機関を転々とすることが珍しくない。義歯や銀歯を作り直したり、マウスピースによる矯正を行っても異常感は消失することなく、むしろ増悪する傾向がある。今までの経験において、三環系抗うつ薬が有効であることを認めているが、抗コリン作用による副作用があり、使いにくいという欠点があった。
そこで今回、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるミルナシプランによる治療効果を検討した。
研究の方法
- 研究参加への同意を得られた7名の咬合異常感の患者(女性6名、男性1名)を対象とした。
- 研究参加の選択基準は下記の通り。
A. かみ合わせのことが常に頭から離れず、自分のかみ合わせが異常であると誤認している。
B, 歯科的な治療を何回も繰り返していているが、かみ合わせの異常感が解消されていない。
C, 精神疾患の既往歴はなく、精神科への受診や治療を強く拒んでいる。
D, 明らかな心理社会的な問題はなく、聡明で社会的な経済力も高く、際限のない歯科治療を可能としている。
- 4週間のオープン試験とし、試験中の歯科治療は禁止した。
- ミルナシプランは、初期用量を15mgx2/日(朝食後と夕食後)とし、以後、症状に応じて増減した。
- 異常感の評価にはビジュアル・アナログ・スケール(VAS)を用いた。加えて、うつ病との関連性を調べるためにZungの自己評価式うつ病評価尺度(SDS)を用いた。
研究の結果
- 患者の平均年齢は53.7歳で、発症してからの期間は平均で39.9ヶ月であった。
- 1名の患者は症状の消失を理由として試験途中に自己判断で投薬を中止したため、解析対象から除外した。
- 1名の患者は、治療に非協力的であり、試験終了時にVASとSDSを測定できなかった。患者の印象は改善なしであったため、VASとSDSの改善率は0%とした。
- 試験終了時のミルナシプランの平均投与量は、65.0mg/日であった。
- 6名のVASの平均改善率は55.3%で、SDSの平均改善率は47.8%であった。
- VASとSDSの改善に相関性は認められなかった。
- 1名に頭痛、1名にめまい、1名に悪心の副作用を認めたが、いずれも軽度であり投薬の中止には至らなかった。

図 咬合異常感に対するミルナシプランの効果
研究の考察とまとめ
- ミルナシプランの4週間の投薬で、6名中5名に咬合異常感の軽減が認められ、3名は著明改善であった。
- ミルナシプランの忍容性は良く、今回の研究において問題となる副作用を認めなかった。
- 咬合異常感の改善作用と抑うつ状態の改善作用に相関性がなく、ミルナシプランは抗うつ効果とは異なる作用で咬合異常感を改善している可能性が示唆された。
(Neuropsyciatric Disease and Treatment 2: 387, 2006)
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