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口腔内セネストパチーの原因と治療
原因
口腔内セネストパチーが生じる原因は未だに解明されていません。患者の訴えるような器質的な所見を認めることができないばかりか、その訴えが奇妙で理解の範囲を超えているため、統合失調症などの精神疾患と思われてしまうことが少なくありません。
精神疾患との鑑別が必要なケースもありますが、うつ病や統合失調症などの精神疾患が疑われる症例は、歯科口腔外科では稀です。
「舌痛症の原因」や「かみ合わせの異常感の原因」で説明しているように、歯科心身症に含まれる疾患群は、その訴え以外の感覚異常はなく、コミュニケーション能力も保たれています。狭義の口腔内セネストパチーは既存の精神疾患のいずれかに該当するものではありません。脳内の神経細胞のネットワークから生じる口腔内感覚の認識に何らかの障害が起こっていると考えるべきでしょう。「クオリア」(脳の神経細胞の活動から生じる主観的な体験としての感覚的な質感)の概念は、この病気を理解する上で重要かもしれません。
治療
「かみ合わせの異常感の治療方法」で説明したことと同様に抗精神病薬や抗うつ薬が有効な場合もありますが、本疾患の場合は反応性の低いことが多く、根気強い治療が必要となります。
治療薬としては、ハロペリドール、リスペリドン、ミアンセリン、ミルナシプランなどが効果的であった症例を経験しています。 しかしながら、第一選択薬といえるものはなく、個々の患者に効果的な処方薬の組み合わせを探していくという作業を余儀なくされます。したがって、医師と患者の信頼関係の構築が重要となります。
患者さん自身は口腔内に異物が間違いなく存在すると確信しています。それを頭ごなしに否定すると良好な信頼関係を築くことができず、その後の治療が困難になります。しかしながら、患者さんの要求どおりの治療を行っても、症状の改善は期待できません。患者さん自身は口腔内という末梢の器官に異常があると実感しているのに、病態の主座が中枢神経系に存在することにこの病気治療の対応上の困難さがあるのです。このような感覚異常の場合、責任病巣が末梢にあろうと中枢にあろうと患者さん自身の苦痛な体験には大差がないと考えられます。
「クオリア」の概念を導入することによって効果的な治療を行うことが可能となった報告があります。「異物がある」「いや、そんなものは存在しない」で水掛け論にならないためにも「クオリア」の概念は効果的と思われます。
口腔内に異物があるという感覚は、実際に異物が存在することによる知覚刺激が脳に伝達されて感じるだけではなく、異物がなくても神経細胞の異常な活動で「クオリア」としてその生々しい感覚が生じることがあることを理解できれば、患者側は実際には異物が存在しないことを認知できるようになり、医師側は異物がないのにその存在を訴える患者を理解できるようになるのです。
脳科学の進歩に伴い、将来的には従来「幻覚・妄想」で一蹴されていた口腔症状への治療と病態解明の手がかりが得られるかもしれません。
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