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気にしすぎて痛いのではなく、痛いから気になる。

舌痛症の原因(メカニズム)

舌痛症の原因は未だ十分に解明されていません。 見た目でパッと分かる異常がないので、痛みの原因は往々にして精神的な問題だと思われてしまう傾向があります。確かに以前は「心因性」の痛みではないかと考えられていましたが、近年では「神経痛」に近い病気で、痛みを伝達し知覚する神経回路に障害が生じているためだと考えられるようになってきました。

舌痛症の患者さんは「気にしすぎて痛いのではなく、痛いから気になる。」と言います。実際にその通りだと思います。「癌ではないか」と心配しすぎて「痛い、痛い」と大げさに言っているわけではなく、「痛みがあまりにも続くから悪い病気を心配する」のです。舌痛症は精神的な病気ではないと考えています。

では舌に潰瘍など器質的な原因がないのに、なぜ舌の痛みを感じるのでしょう? この病気では口腔の痛みの感覚神経が「回線の混線」を起こしていると考えられるのです。すなわち痛まなくてもいい時に、痛みの神経回路が勝手にバチバチと電気信号を発している状態が起こっていると考えています。睡眠不足、体調不良や疲労などによって、この電気信号の活動が影響を受けるため、症状に波があると考えると説明がつきます。

従来、舌の痛みは何らかの刺激(口内炎などのキズや火傷など)が原因で生じるもので、そのような刺激がない状態での痛みは異常であり心の問題と考えられてきました。

しかし、最近の脳科学の知見によると、脳は全く外部入力(外からの刺激)がなくても知覚経験(痛みなどの感覚)を創造できることが明らかになっています。 次のような説明がわかり易いでしょう。「幻肢痛」という病気があります。これは、地雷・交通事故・病気などにより手足の切断を余儀なくされた方が、失ったはずの手や足に痒さや痛みを感じることがあるのです。これを幻肢痛というのですが、気のせいで起こるものではないことが容易に理解できると思います。幻肢痛の痛みは中枢性疼痛というもので、脳内の痛みの神経回路に何らかの異常が起こるために、ないはずの部分に痛みを感じるのです。

このような痛みは中枢神経系のかなり上位、すなわち脳自体にある体性知覚回路を通る電気信号の流れが変化することによって引き起こされるのではないかと考えられています。

舌痛症や幻肢痛の痛みは抗うつ薬によって軽減あるいは消失することが臨床的な研究によって証明されています。抗うつ薬は、その作用機序として脳内のセロトニン神経やノルアドレナリン神経の情報伝達を促進させます。抗うつ薬への反応性から、これらの神経系への作用が「回路の混線」を正常化させていると考えられます。


炎症や傷害などが何もないのに慢性的な痛みを感じる疾患は驚くほど多いことがわかってきました。  舌の病気である舌痛症は脳内の神経回路の混線が原因と考えられます。
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