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かみ合わせの異常感(咬合異常感)の原因(メカニズム)

歯、あご、口腔を検査してもかみ合わせの支障となるような原因は見つかりません。また歯を削ったり被せたりなどの歯科的治療では効果がありません。歯科医師にこの苦しさを切実に訴えれば訴えるほど、原因は心の問題ではないかと思われてしまう傾向があります。

咬合異常感をもつ患者さんは「気にしすぎて異常を感じるのではなく、現にこのかみ合わせがおかしいのだ」と言います。

では見た目は問題がないのに、どうしてかみ合わせの異常を感じるのでしょう。咬合異常感の原因は未だ十分に解明されていませんが、「口腔感覚の認知」過程に歪みが存在しているためと考えられます。「口腔感覚の認知」とは、歯根膜や咀嚼筋の筋紡錘(きんぼうすい)から脳へ向かう口腔感覚情報が集合整理され、脳内で治療前の咬合の記憶と照合され、「かみ合わせが低い」「この歯が当たりすぎる」あるいは「確かにこのかみ合わせでよい」などと判断される一連の情報処理過程を指します。


脳神経
図  かみ合わせの異常感の病態仮説


食物をかむという咀嚼運動は非常に複雑なものです。食べ物の大きさや硬さ、咀嚼により形状が変化していく過程などに応じて巧みにかみ方を変化させています。また、舌も咀嚼運動に協調して巧みに位置をかえているのです。咀嚼運動は咀嚼筋(咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋)の働きによるものですが、歯根膜や咀嚼筋の筋紡錘が食物の形状を読み取って無意識のうちに最適な運動をしているのです。すなわち、咀嚼運動の基本は反射の組み合わせから成り、口腔からの感覚情報をもとに間脳の視床下部の統御のもとに円滑に進められます。

ところが咀嚼筋は随意筋(ずいいきん)であり、意思によって動かすことができるのです。本来なら「自動操縦」で行われる咀嚼運動に対して、「あごをここにもってくればいいはず」などと、いちいち考えながら「マニュアル操作」で咀嚼を行っているのが本疾患なのです。

このように本症の病態は、歯や咬合といった末梢レベルにとどまらず、視床下部や大脳皮質連合野などの高次脳機能まで巻き込んでいると考えるべきです。咬合異常感は抗うつ薬や抗精神病薬によって軽減あるいは消失することが臨床的な研究によって証明されています。これらの薬は脳内のセロトニン神経、ノルアドレナリン神経、ドパミン神経の情報伝達を促進する作用をもっているので、これらの神経系への作用が「マニュアル操作」を「自動操縦」へと正常化させていると考えられます。


日常的になにげなく行っている食物をかむという行動は生きていく上でとても重要なことなので、複雑な神経回路で制御されています。  そのちょっとした制御ミスでかみ合わせの問題が生じるのは何も不思議なことではありません。  歯並びや義歯などの修正で解決できない場合が少なくありません。
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